❖聖書個所 イザヤ54章10節 ❖説教題 旧約聖書は道備え
◆(序)旧約聖書とは何か
①旧約聖書の内容、分類
📝律法 ❶創世記(創造からBCの1600年代前半)
❷出エジプト記(BC1300年代半ばから1200年代前半)
❸レビ記(BC1200年代前半から半ば)
❹民数記(レビ記と同じ時期)
❺申命記(BC1200年代半ば)
📝歴史 ❶ヨシュア記(BC1200年代後半)
❷士師記(BC1200年代後半から1000年代前半)
❸ルツ記(BC1100年代前半)
❹第一サムエル記(BC1000年代前半から後半)
❺第二サムエル記(BC1000年代後半から900年代前半)
❻第一列王記(BC900年代前半から800年代半ば)
❼第二列王記(BC800年代半ばから500年代前半)
❽第一歴代誌(BC1000年代後半から900年代前半)
❾第二歴代誌(BC900年代前半から500年代前半)
⓫エズラ( BC500年代半ばから400年代半ば)
⓬ネヘミヤ(BC400年代半ばから後半)
⓭エステル(BC400年代前半)
📝詩歌 ❶ヨブ記(不明であるが、物語は族長時代のものと考えられている)
❷詩篇(BC1100年代~不明)
❸箴言(BC900年代)
❹伝道者の書(BC900年代後半)
❺雅歌(BC900年代後半)
📝預言 大預言書 ❶イザヤ(BC700年代半ばから600年代後半)
❷エレミヤ(BC600年代半ばから500年代後半)
❸エレミヤ哀歌(BC600年代後半から500年代前半)
❹エゼキエル(BC500年代j前半から560年頃)
❺ダニエル(BC600年代後半から500年代半ば)
小預言書 ❶ホセア(BC700年代後半から600年代始め)
❷ヨエル(BC800年後半から700年代始め)
❸アモス(BC700年代後半から半ば)
❹オバデヤ(BC500年代後半から半ば)
❺ヨナ(BC700年代前半)
❻ミカ(BC700年代半ばから600年代前半)
❼ナホム(BC600年代前半から後半)
❽ハバクク(BC600年代後半)
❾ゼパニヤ( BC600年代後半)
❿ハガイ(BC500年代後半から400年代半ば)
⓫ゼカリヤ(BC500年代後半から400年代半ば)
⓬マラキ(BC400年代後半)
現在の旧約聖書の配分は、ローマ帝国内の諸都市に住むユダヤ人のために作成した70人訳聖書( ギリシャ語、BC200年代)にならっている。ちなみに、ヘブル語聖書は、トーラー(律法、5書) ネビィム(預言者たちの意味、 21書、先の預言者、後の預言者に区分される) ケトゥビィム(諸書、13書。詩篇、ヨブ記、箴言、ルツ記、雅歌、伝道者の書、哀歌、エステル記、ダニエル書、エズラ記、ネヘミヤ記、第一、第二歴代誌)の構成になっている。
②旧約聖書は、初代教会時代、すでに聖書として受け入れられ、使用されていた。(使徒の働き、各書簡)今日のように章節がつけられたのは、16世紀半ば、聖書が印刷されるようになってから。参考までに、カトリックでは、39巻の他に、七つの書を第二正典としている。
旧約聖書の正典について考える時に、注目すべきことがある。「死海写本」が発見されたことである。1947年、死海付近の多くの洞穴からヘブル語聖書、外典、偽典が発見された。ユダヤ教の一つの宗団、エッセネ派が残したものと考えられているが、その発見により、その人々がBC250年頃使用していたものと、現代の旧約聖書が同じであることが判明した。それまで、最も古いヘブル語聖書の写本はAD900年代のものであったが、一挙に10世紀近く遡ったのである。しかもほとんど同一であることが判明し、世界中を驚かせた。旧約聖書は、何世紀もの間、聖書学者、写本作成者が精魂を傾けて、正確に伝えてきたことが明らかになったからである。
◆(本論)旧約聖書の中心
①では、このように人々が精魂を傾けて守り、伝えてきた旧約聖書の中心は何か。39巻という多くの文書、しかも時代も立場も異なる30数人の著者によって書かれていることから、旧約聖書は難しいという印象があるが、全体が伝えている事柄は明白である。なぜなら、時代的に最初に書かれたものと最後に書かれたものには千数百年の開きがあり、著者も全くばらばらであるが、真の著者は、神ご自身であるからである。第二ペテロ1章21節、第二テモテ3章16節(朗読)ここで言う霊感の意味については神学の大きな問題になっているが、ともかく、神ご自身がすべての著者のうちに働き、大切な使信を伝えるように導いたのである。
②では、神はそれぞれの著者を通して何を伝えようとしているのか。それは次のようなことである。神、創造主がおられ、天地万物を創造したこと、中でも神のかたちとして人を創造したが、しかし、人は、サタンの巧みな誘惑により、自らが神のようになりたいという思いを持ち、神に背き、自分が善悪の基準となり、すべての関係が歪んでしまった。生きる意味、目的、喜びを失い、人同士の関係も壊れ、自然を欲望によって貪るようになった、中心が罪と死に支配されるようになった。しかし、神はそんな人をなお愛して、アブラハムを義と認め、すべての民族はあなたによって祝福されるという契約を結び、(創世記12章) その子孫であるイスラエルを神の民、選民とし、律法を与え、全世界の祭司の王国とした。中でも、全体を通じて特に覚える必要があるのは、救い主を送るという預言を繰り返し行っていることである。神は、神と契約を結びながら、不信を繰り返した民たちに、御心にかなった王や預言者を送り、悔い改めを迫り、また裁きを告げ、神のもとに帰るように促している。旧約聖書は、そんな神の変わらない愛を伝えている書である。
◆(終わりに)旧約聖書を読む時に
私は、聖書を理解するには二つの方法が必要と考えている。虫のように今ぶつかっているところを理解することと鳥のように全体を見渡すことである。多くの人々は、虫のような方法で前に進もうとしているが、全体を見渡していないから、混乱しやすい。旧約聖書全体の目的を見落とさないことが大切である。旧約聖書は、神に背き、罪と死に支配されるようになった人の罪を贖うために、神がイスラエルを選び、彼らを通して神の御心を知らせ、やがて時が満ちた時に、救い主がこられることを伝えている希望の書である。救い主のために道備えをしている書である。