賜物の用い方

❖聖書個所  Ⅱコリント8章1節~15節         ❖説教者 川口 昌英 牧師

❖中心聖句 私はあかしします。彼らは自ら進んで、力に応じ、いや力以上にささげ、聖徒たちを

 支える交わりの恵みにあずかりたいと熱心に願ったのです。   Ⅱコリント8章3節~4節 

 

◆(序)飢餓の現状と原因

①繰り返し言っていますように、10月16日は国連が世界における栄養不足、飢餓、極度の貧困を解消することを目指して制定した世界食糧デーです。この日には、世界の飢餓や貧困の現状を知り、自分たちに何が出来るか、共に考え、行動することが期待されています。

 世界の飢餓と取り組んでいるJ.I.F.H(日本国際飢餓対策機構)の情報によると、世界人口72億人のうち、約8億人、約11パーセントが飢餓状態(必要な栄養を取ることができない状態)にあります。そして1日に約2万5千人、1年間に約1千万人が~子供が約7割~食糧、栄養不足のために亡くなっています。飢餓状態にある人々は、1974年は4億5千万人でしたが、今日では約8億人です。飢餓解消のためのさまざまな働きがなされているのですが、減少していません。世界全体の人口が増加しているというだけでなく、比率も減っていないのです。

 飢餓状態にある人々が増えていることについて、人口に対して生産される食糧の絶対量が足りないのではないかと言われます。しかし、これもJ.I.F.Hの報告によると、世界の食糧生産は2016年の統計ですが、25億トンの収穫があり、72億人で割ると1人あたり347キログラムになり、1人が1年間に必要な量、180キログラムを十分に満たす量が生産されています。

②必要な絶対量が確保されているのに、何故、現実に世界人口の約11%の人々が飢餓状態にあり、年間1千万を超える人々が食べる物がなく、栄養不足に陥り、亡くなっているのでしょうか。次のような理由が指摘されています。イ、グローバル経済によって、世界の一部の者が富を多く得て、その地域に住む者が豊かさに与れない、貧困層が増大するような経済の仕組みの問題 ロ、政情不安、民族の争いによる内戦が繰り返されている政治的混乱 ハ、食糧が必要とされている地域で急激に人口が増大していること ニ、地震、洪水、干ばつなどの自然災害により、以前は可能であった地域で食糧生産が不可能になっていることなどです。

 これらの理由により、世界の各地で飢餓状態が引き起こされていると考えられ、国連や多くのN.G.Oにより、諸々の対策がとられて来ました。国際的な武力介入によって混乱の終結を目指すこと、貧困地域に対する経済援助、また人口が増大している地域に対して人口抑制の啓発、食糧増産の努力などです。しかし、こういった取り組みにも関わらず、その結果はテロの増加であり、貧富の格差が広がったことであり、ますます、いのちの重みが忘れられているという現状です。

③それらは、表面的、具体的問題を扱うだけでは飢餓状態の解消は出来ないということを示しています。根本から考えないと真の解決はないのです。世界の人々が生きるための十分な食糧があるのに、今も現実に8億の人が飢えているその理由を探ると、問題の中心を見えてきます。               

 先程から見ているように、食料は十分あるのです。けれども実際にそのうちの多くを世界の5分の1以下の先進国に住む者が自分たちの食糧として食べ、又その人々が食べる肉を生産する飼料として、或いはバイオ燃料用として消費しているのです。また大量に廃棄しているのです。(日本では一年間に食料が320万トン、約1.800万人分の食べ物が捨てられているとのことです。) 

 

   こういった状態が続く限り、世界の全ての人が生きるために必要な食物、栄養をとることはできないのです。ちなみに、先進国においては、1年間に約1千億ドル(約10兆円)の食糧が捨てられ、1兆2千億ドル(約120兆円)の武器が販売されています。ある国際機関の幹部は、この統計を見て、どうして飢餓に苦しむ人々を救うための300億ドル(約3兆円)がないなどと言えるだろうかと現状を嘆き、告発しています。

◆(本論)飢餓の本質①これらから分かるのは、飢餓の真の理由は、 J.I.F.H(日本飢餓対策機構)が指摘しているように、人間の本質の問題、本来の姿の中心が損なわれている姿、罪なのです。

a、神との関係の崩壊…この世界を良きものとして創造され、人をご自身のかたちとして創造された方を認めず、自分を中心として生きるようになっていること、b、人間の崩壊…元々は大切な存在としていのちが与えられ、生かされ、愛されていたが、創造主との関係を自らから破壊した結果、真の生きる意味、目的を失い、また自分以外の他の人々、共にいる者たちよりも物を大切にする、又人を目的ではなく、自分のために手段にし、支配していること、c、被造物との関係の崩壊…世界の資源、埋蔵資源、森林等をただ自分たちの利益のために乱獲、乱伐していることなどです。

 世界の飢餓は、これら自分を中心とする、本来の創造、神のかたちが崩壊している罪の問題を抜きにして解決できないのです。確かに具体的な現象、さきほどから見ているような政治的混乱、経済的な不平等、又人口増大などの社会的な問題、災害等と深い関係があり、そしてそれらに対する対策も確かに効果があるのですが、しかし、根本的解決にはなっていないのです。何故なら、世界の飢餓の根本の原因は、状況の問題だけではなく、食糧の分配に見られるように、世界に生きる人の本質、罪の問題であるからです。

 そのため、この飢餓問題と真摯に取り組んでいる人々は、飢餓状態にいる人々の現実のために具体的な援助を行うだけでなく、飢餓がない先進国の人々、飢餓状態にいる人々の両方に対して、飢餓の根本原因は、人の本質、罪にあると指摘し、罪よりの救い、福音が与えられていることを知らせ、その主の愛によって生き方を変える人々、神の国の民たちが多く起こされることを最終目標にしているのです。この日本においてJ.I.F.H(日本国際飢餓対策機構)が積極的に活動しているのはそのためなのです。

②聖書本文を見てきませんでしたが、ここに言われているマケドニヤの諸教会は、ピリピやその地域にある教会のことです。著者パウロは、この地域の教会は、彼ら自身が激しい迫害を受け、また極度の貧しさにありましたが、困難の中にあったエルサレム教会の貧しい人々を支援するために、惜しみなく自ら進んで、力に応じ、いや力以上にささげたと言っています。それはまず、彼らの信仰から来る満ちあふれる喜びによるものであり、第二に彼らが、聖徒たち、共に主を信ずる者たちを支える交わり、喜びや苦しみを分かち合う恵みに自分たちも加わることを熱心に願ったからだったと明らかにしています。そしてそんな彼らの中心にあるのは、まず自分自身が救いを喜び、感謝し、すべてを主にささげている姿であると明言します。みなさん、人は豊かだからささげる訳でないのです。また時間や能力があるから主のための奉仕をする訳ではないのです。自分に向けられている神の愛の豊かさを深く感じるから、又同じく主の恵みの中に生かされている人と共に支え合うことを願うから、厳しい中でも貧しさの中でも、持てるものをささげようとするのです。

◆(終わりに)賜物を用いる姿勢

 

 諸問題が複雑に絡んでいる飢餓に対して私たちが意識を持ち、祈り、ささげてもすぐに状況が改善することは難しい。けれども、飢餓の真の理由が分かると、我々自身の意識が変わるのではないでしょうか。自分の生き方、賜物(時間、能力、富)の用い方を見直すよう導かれるのではありませんか。世界の中で、一人でも多くの者が飢餓の真の理由、人間の罪が深刻な状況を引き起こしていることに意識を持ち、そのために祈り、ささげて行く時にこの教会の有志が支えている里子のように現実に人生が変わる人々が起こされるのです。現在、世界の貧困地域のこどもを毎月一人4.000円を送り、多くは四人一組みとなり、1.000円づつを負担し、こどもと家族を支援しています。現在、11人の里子を支えています。里子からの手紙には、支援によって、学校に行くことができたというだけでなく、神の愛を知り、自分も家族も本当に人生が変えられたと書いてあります。特別なことでなくても、里子支援のように、世界の飢餓や困難な現状を意識し、恵みを自分の内に閉じ込めないで、自分にできることをするとき、主はその小さな想いを祝してくださり、困難な中にいる方々を支える働きに加えてくださるのです。まず意識をしようではありませんか。